新型コロナウイルス(COVID-19)拡大が 会社員の精神的健康に与える影響に関する調査と個人に対するフィードバックの実施報告

新型コロナウイルス(COVID-19)拡大が
会社員の精神的健康に与える影響に関する調査と個人に対するフィードバックの実施報告

■はじめに

株式会社イヴケア(以下、当社)では、これまで主観(自己認知)と客観(身体反応)の両側面からストレスという課題に取り組んで参りました。

今回の新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大によって、従来の働き方には、急速な変化が求められています。当社の技術である毛髪を用いたストレス評価は、毛髪の採取日から最大6ヶ月間のストレス反応の蓄積を評価することが可能です。この特長を利用して、緊急事態宣言前中の会社員のデータを取得し、COVID-19の拡大、働き方の変化が会社員の精神的健康に与えた影響について調査を行いましたので、公表いたします。
緊急事態宣言中に在宅ワークに移行された方と緊急事態宣言中も変わらずオフィスワークを継続した方の両方に対して調査を行い、両者の比較も実施いたしました。さらに、対象者が自身のストレスについて正しく認知し、今後に活かすことを支援するために、個々人に評価結果のフィードバックを実施いたしました。
本調査結果をもとに、個人の状態に応じたケアを模索し、実践することは、新たな環境下で「優しさに満ちたWell-beingな社会」の実現を目指す当社の使命と考えます。

なお、今回の調査及びフィードバックの実施は、調査の目的・内容について十分な説明をし、ご理解いただいた上で、文書にて同意が得られた方々を対象に行いました。

■調査の方法
対象者 :
緊急事態宣言中に在宅ワークに移行された方5名
緊急事態宣言中もオフィスワークを継続した方5名の計10名
(うち男性8名、女性2名)

調査期間:
毛髪の採取期間:5月28日、5月29日
質問票の回答期間:5月28日~6月17日
個人に対するフィードバックの実施期間:6月29日、6月30日

調査項目 :
1)緊急事態宣言前及び緊急事態宣言中の客観的なストレス反応
①5ヶ月間(緊急事態宣言前 1月~2月、緊急事態宣言中 3月~5月)の毛髪中ストレスホルモンの蓄積量
②同時期の抗ストレスホルモンの蓄積量
③ストレスホルモンと抗ストレスホルモンの蓄積量の比

2)緊急事態宣言中の主観的なストレス反応
①基本的な心身のストレス反応:PRHFストレスチェック・ショートフォーム(以下、PRHF SCSF)
②緊急事態宣言の発令後の仕事及び生活様式の変化の実感(1~5点満点で高い方が実感を感じている)
及び上記の変化に伴うストレスの実感(1~5点満点で高い方が実感を感じている)

■緊急事態宣言前と緊急事態宣言中の主観的・客観的なストレス反応の変化

1.主観的なストレス反応の変化
①基本的な心身のストレス反応:対象者のPRHF SCSFの総合得点の平均は、全国平均範囲内の得点であり、今回調査を行った集団は特別な偏りのない集団であったことがわかります。

②緊急事態宣言の発令によって生じた仕事や生活様式の変化の実感:緊急事態宣言の発令による仕事の変化の実感の平均点は2.4点で、それに伴うストレスの実感の平均点は2.9点でした。生活様式の変化の実感の平均点は3.4点で、それに伴うストレスの実感の平均点は2.8点でした。
この結果から、今回の対象者内では、仕事よりも生活様式の変化が強く実感されていた(p = 0.017)と考えられます。その一方で、変化に伴うストレスの実感については、仕事と生活様式に殆ど差はありませんでした。

2.客観的なストレス反応の変化
図1は、緊急事態宣言前と緊急事態宣言中の毛髪中のストレスホルモン及び抗ストレスホルモンの蓄積量の推移です。ストレスホルモンの蓄積量に統計的な有意差はありませんでした。一方で、抗ストレスホルモンの蓄積量は、緊急事態宣言前と比較して、宣言中の方が有意に増加していました(p = 0.008)。また、ストレスホルモンと抗ストレスホルモンの量の比に有意な差はありませんでした(図2)。
ストレス反応とは、外部から受ける様々な刺激(ストレッサー)によって生じる心身の反応を指します。今回の結果は、緊急事態宣言により、出勤や外出が制限されたことによるストレス反応に変化はなく、普段と同程度であったことが示唆されました。その一方で、抗ストレス反応は上昇しており、緊急事態宣言に伴う働き方や生活の変化に適応するため、抗ストレスホルモンの分泌が促されたのではないかと考えられます。

■緊急事態宣言による働き方の相違による主観的・客観的なストレス反応の比較

1.主観的なストレス反応の比較
図3は、緊急事態宣言中に在宅ワークへ移行したグループ(以下、在宅ワークグループ)とオフィスワークを継続したグループ(以下、オフィスワークグループ)のPHRF SCSF得点の比較です。この図に示すとおり、在宅ワークグループの得点が、オフィスワークグループよりも有意に高いことが分かりました(p = 0.034)。在宅ワークグループでの主観的なストレス得点の増加は、慣れない仕事様式への移行に向き合い続けたことが一因であると考えられます。

2.客観的なストレス反応の比較
図4は、緊急事態宣言中(3月~5月)に在宅ワークグループとオフィスワークグループで、毛髪中のストレスホルモン及び抗ストレスホルモンの蓄積量を比較したものです。どちらのホルモンの量についても、在宅ワークグループの方が低い傾向がありましたが、有意差はありませんでした。

上記の結果は、環境の変化により主観的ストレスと身体反応との間に乖離が生じたことを示唆していると考えられます。

■フィードバックの実施

調査後、調査依頼に協力いただいた方全員に、結果のフィードバックシートを返却し、15分~30分間の個別の面談を行いました。

フィードバックの中で緊急事態宣言中の主観的な変化を訊ねたところ、次のような回答が得られました。
このように、同じ働き方の変化でも、個人の特性や家族環境などによって受ける影響は異なることがわかります。

<在宅ワークへ移行したグループ>
・毎日疲れを感じていた
・通勤がない分、身体的には楽であったが、人と話さないことがストレスであった
・勤務時間が減少した

<通勤が継続したグループ>
・早めに帰宅することが出来るようになった
・子どもの保育園が休みとなり、夫婦で順番に休みを取ることが大変であった

さらに、当社の実施したフィードバックの感想から、対象者を以下の3種類に分類し、各人に応じたアドバイスを行いました

・最適モニタリングタイプ
客観的な身体反応と主観的な体験が合っていた人。この調子で程よいモニタリングを続けるようアドバイスをしました。

・過少モニタリングタイプ
主観と客観にズレがあり、思った以上に身体のストレス反応が高かった人。自身の身体のサインへの気づきを高め、疲労をためることがないよう、アドバイスを行いました。

・過剰モニタリングタイプ
反対に思った以上に身体のストレス反応が低かった人。心配や不安を和らげるアドバイスを行いました。

このような感想やタイプ分類からも、主観的なストレス反応と客観的なストレス反応は必ずしも一致しないことが分かり、それぞれにとって貴重な気づきの機会となったようです。
今回、調査に協力いただいた対象者の方々には、本フィードバックを通して、主観と客観、両方のストレス状態に興味を持っていただき、フィードバックを今後に活かすことができそうだとの感想をいただきました。また、対象者の方全員が、可能であれば引き続きストレスの評価を継続したいと希望されました。

■調査のまとめと提言

今回の調査結果を次のようにまとめます。

1.抗ストレスホルモンの有意な上昇
質問票による結果から、緊急事態宣言の前と緊急事態宣言中では仕事よりも生活様式の変化が大きく実感されており、抗ストレスホルモンの有意な上昇も認められました。コロナウイルスの拡大によって生活様式の変化が強く自覚され、適応のために抗ストレスホルモンの分泌が促されたのではないかと考えられます。

2.在宅ワークグループで主観的ストレスが高い
在宅ワークグループと、オフィスワークグループで主観的・客観的ストレスを比較したところ、客観的ストレス指標に有意差はなく、在宅ワークグループのほうが主観的ストレスは高い結果となりました。在宅ワーク中心の新たな働き方の変化により、人とのコミュニケーションや外出機会が極端に減少することで、主観的なストレス反応が高まり、身体のストレス反応と乖離が生じる可能性が示唆されました。

働き方の変化が個人に与える影響は、性格や環境によって様々に異なります。在宅ワークに移行したグループで、主観的なストレス(質問票)と客観的なストレス(毛髪)の評価結果が一致しなかったことからも、個人が認知している自身のストレス状態は、必ずしも身体的なストレス反応と一致するわけではないことがわかります。そのため、主観と客観の両面から自身のストレスを正確に把握し、最適な対策を講じていくことが重要です。

新型コロナウイルスの拡大は、ウイルスへの感染だけでなく、「感染に対する恐怖」や「行先の見えない将来への不安」など多くの人々の心にも大きな傷を残しています。このような時代の中で、当社は、今後も事業を通して個々人が自分の心の状態に気づき、適切にセルフマネジメントできるようサポートし、一人一人の心を大切にした職場環境づくりの支援をしてゆきたいと考えています。

ウィズコロナ、アフターコロナの中で、働く方一人ひとりが心身の健康と幸福に満ちた生活を送るために、本調査の結果が少しでもお役に立てると幸いです。